断捨リスト 父

遺品整理のため多めに休暇をとったのはそもそもは父が体調を崩してなかなか進まないのではと思ったから。しかしそんな心配は無用であった。職場には「全然進まなくて〜まだまだ残ってるんです〜」と言ってあるが、現実にはもう捨てる捨てる。私や弟の小さい頃の写真や、声が入ったテープまで躊躇なく捨てる。私の役割はゴミの一時置き場(収集日が少ない。田舎だから)を定期的にチェックして、「これは捨てないでくれー」というものを拾うことであった。
で、「あまり今のうちに進めるとあとでやることなくなるから残しておけ」と言われ、あんまりやることなく、日々の炊事と、学生時代の漫画のコレクションを読み返すとか、車借りてちょっと町内走ったりとか、途中からただのふつうの帰省になった。大体私に残されたものはないし、着物類を形見分けしようにも親戚は帰ってしまったし、母個人の預金通帳は出てこないし、することがない。

それはそうと、もともと私は思い出の品ならとっとけばいいじゃん派なのだけど、関東に住むととにかく湿気がすごくて備え付けの収納スペースがどんなにあっても、そこにしまったものがいつのまにかカビたりして収納の意味ないし、やっぱりモノをため込むのはよくないのう、と思って断捨離に踏み切ろうとした矢先に今回の葬式があって中断してしまった。で、実家に帰ったらそれはもうすさまじい整理整頓ぶりで、男やもめ一人の家庭の清潔さと美しさに、我が家は完膚なきまでに負けまくっているのが現状。だって影膳しようにもその場所もないのですよ。もうこれはなんとかせないかんだろう。今日からまた始めます、断捨離。関係ないが影膳は好きだ。おままごとみたいで。

火葬場の待合中に、親戚から「お父さんほんとにきちっとしてるわよねえ・・・あなたもそうなの?」と訊かれ、「私は全然ですよー。猫飼ってるし、あまり細かいこと気にしてたらきりがないです。」と答えたのだが、この時親戚がビミョーな顔をしたのだよね。全部終わって家に帰ったら理由がわかった。実家には猫がいたのだ。空港から斎場へ直行し、そこにずっといたからその猫を知らなかったのだ。

猫、名前がダル○ッシュ。壁にもソファにも柱にも爪をたてず、網戸も開けず、好き嫌いなく、しかし人の食べ物をあさらない。何をしても逃げない。イヤな時も嬉しい時も逃げない。イヤなことをされた時は無言で渾身の力を込め万力のようにギリギリと歯をたててくる。私は掌が裂けた。筋骨隆々たくましく健康で、あまり毛が抜けず、ほどよくおしゃべり。ちょっと目が据わってて体重がありすぎるがハウスキャットとして理想の猫である。でも尻尾で床を叩く音がズバンズバン怖いのでちょっと加減してください。あと名前、それちょっとどうにかなんなかったのっていうか誰がつけたの。

私は小さいころから「あんたがだらしがないのは父さんのほうの血だ。私の家系にそんなのはいない」(以下2時間続く)と母から叱責されたのだけど、どうも父の血でもなかったみたいだ。