妻が見ていても痴漢する男がいる

痴漢については、痴漢する男性と痴漢にあう女性の対話にならないと何一つ進展しないのに、それ以外の男性がここで抵抗しないと殺されるとばかりに反発する。痴漢冤罪っていうまたねじれた問題があるのが、正直本当にめんどくさい。確かに痴漢の烙印を押されたら社会人生命を絶たれるような事件だろうが、自ら社会人生命を断ちに行くような猛者が総武線京葉線に山ほどいて、全員スーツで中には調べたら会社がわかるようなバッジつけてるやつもいるんだよね。絶対につかまらない自信あるの?日々痴漢冤罪のニュースを見ながら「俺の身代わり…ククク」とか思ってるんだろうか。この人たちは痴漢を続けながら、絶対に痴漢冤罪(じゃないけど。ガチだけど)に巻き込まれないなんらかのスキルを持っている。ものすごく興味深い。痴漢冤罪が怖い男性はなんとしてもこれらの男性を特定して、その神業を伝授してもらいなさい。そしてそれを世に知らしめればいいよ。そうしたら痴漢が実際いることも、どんな手口を使うかも、実際に痴漢しながらつかまらないコツ=痴漢冤罪被害者にならない秘訣も世に広まって、すごくカオスでいいと思う。

つらつら自分が痴漢にあった体験を思い出していたら、3年前オーバールックホテル日本版みたいな観光施設にいた頃、その人の配偶者の目の前で痴漢されたのを思い出した。

一人でブースの番をしてたら、O市から来たというやや年配のご夫婦がきた。私はO市には親戚がいる。「親戚いるんですよ。ご存知かも。〇〇って言うんですけど(ちょっとした地元の名士)」と言ったら、男性は「知ってるよ、〇〇さんでしょ」と言いながら、私の胸についているマスコットキャラクターのついたネームバッジを触ってきた。「あんた名前が違うけど」「結婚したので」(私の背後には男がいるぞアピール)。

ダイレクトに胸を触るわけではないが、下から上へ何度もその小さな人形を軽く持ち上げては落とす。そのたびに胸にも触る格好だ。目はずっと胸を見ている。ちなみに私はAAカップでそこそこ太目。そんなことをしながら私と会話している。その横には彼の妻がいる。彼と同じくらいの年齢の女性である。
妻は別にやめなさいとか言わない。私も立場上、そして状況上「やめてください」とは言えないので、早くやめてくれないかな、ていうか奥さんが見ててやる男って初めてだな。しかも親戚が知り合いって言って、赤の他人でもない(フリかもだけど)のに、と思っていたら、奥さんがやっと「お姉さんもお仕事なんだからあまりおしゃべりしたら迷惑よ」とかなんとか言った。それでも男はやめずに続けた。が、そこに男の母、女性にとっては姑がやってきて、やっとやめた。母に見られるのはさすがにまずかったのか、あるいはそもそも私の胸が母がゆっくりと展示物を見て戻ってくるまでの暇つぶしだったのだろう。多分この男にとっても、車内の痴漢にとっても、女の体なんて通勤中の暇つぶし程度のものなんじゃないか。暇つぶしのスマホアプリがいきなり人権主張したらそりゃびっくりするよな。

静かな、機械音しかない薄暗い半地下で、妻を連れた男に延々と痴漢されるという稀有な経験であった。ほかに客はいなかった。

私は痴漢、レイプ、強制わいせつなどは「暴力」というよりも、あるいは暴力であると同時に「性を手段にして相手に屈辱を与えようと企てる」行為だと思う。それによって傷つくか傷つかないか、どの程度傷つくかが人によるので、「性犯罪は女性の一生を台無しにする」という断言も実は好きじゃない。その言葉がかえって「私は傷つかねばならないのだ」というふうに女性を縛ることにもなると思う。少なくとも総武線の痴漢は大体ヤワだったので、私は自分で対抗できたし、あれらが自分の傷になって残ったとは思わない。

決め手は「なんか触ってる?でも勘違いかもしれないし」と躊躇しないこと。躊躇してると追い込まれる。勘違いであっても身体的に不快なのだから、顔に出すとかしたうちするとかもぞもぞするとか、火急の用を装って電話するふりをするとかした方がいい。「あっすいません、今電車なんです、今向かってますので、はい」とか言って。

で、それら全般の傷について男性に訴える時、「自分の恋人や娘や姉妹が被害にあったらどう思うのか」というのはよく聞かれる言葉だが、おそらく何も思わないのではないか。そうでない男性もいるのは、実際によくわかっている。建前ではなく本当にちゃんと考えられる男性もいることは知ってる。でも娘が職場でセクハラされたと、泣いて訴えられても「そうか」と流す父の方が多いとしても私は驚かない。彼らにとって社会は男という原子が組み合わさってできた結晶なんじゃないだろうか。女はそこにかろうじて存在を許されているだけで、何か騒ぎ立てると結晶構造を揺るがすノイズになってしまう、そういうイメージなんじゃないかと思っている。

あーまたひとつ思い出した。前夫が私の臀部(着衣だけど、もうでかでかと臀部のみの写真)の写真をブログに載せたので「肖像権を主張する」と言ったら「じゃあもう載せない」とむくれたっけ。何様?