夜をこえて

ゆうべ、ニャンギーは何度も便意を催しトイレに行くんだけれども、いきんでもいきんでも出すことができず、そのたびに反動で胃液を吐き上げる。吐き上げる内臓のえづきに耐えられずによろけてドアや壁に体をゴツンガタンとぶつけながら吐く。

父をおこして浣腸を施すも、薬液しか出ない。そのあとがなかなか出せない。そして吐く。便意をおなかにかかえたまま、ニャンギーはあっちの部屋こっちの部屋と移動する。活発なのではなく、今この場所が苦しいから、苦しくない場所を探しているのだ。そして吐く。移動する。トイレへ行くのも、トイレでしなくてはいけないからではない。おなかがはって苦しいから、苦しさがとれる場所へ行くのだ。

あっちのトイレこっちのトイレとふらふらしながら、1時間ほどかけて小さな塊をふたつ出した。そして吐いた。浣腸から2時間、ようやく嘔吐も便意もおさまったようで私のベッドの上でぐったり横たわったので、猫の下にしきものをして私も眠る。もう一緒に眠るのは今日が最後かもしれないと思ったけど、朝起きてみたらまだ生きていて、玄関にけっこうな大きさの糞塊がおちていた。

しきものには茶色いしみが広がり(おそらく胆汁であろうと思う。薬液にしては多すぎる)、水もえさも口にした様子がないので、シリンジでまたたび粉をといた水を飲ます。

腸がつねに脱水をおこしている。便から水分がぬけ、カチカチの塊になって腸をふさいでしまう。3日便通がなければ浣腸をしているのだが、これも負担になっているようだ。人肌に温めたオリーブオイルで浣腸をしてやるといいようなのだが、いい器具が見つからない。

今もぐったりと寝ているけれど、苦しいのを我慢している寝方ではない。少しは楽になっているといいのだが。

火曜日から私はひどい頭痛と熱で、しかし塾の授業をずらすと振り替えが面倒くさい。なのでひどく無理をして授業の準備をし、なるべく体を使わない、生徒と接触せずにすむアクティビティで授業をして帰ってきた。帰ってすぐ横になりたかった。ニャンギーに薬を飲ませて、あとはもう何もしない。なのに帰ったらそのタイミングで父が料理を始めた。こういう時は申し訳ないがもう放っておいてほしいのだ。本来なら私の役目なのに何も言わず、家じゅうの家事はできるものがするという暗黙の了解で進んでいくのは幸せなことなのはわかっている。それでも体中が一瞬で火が付いたように痒くなり、自室に飛び込んでありったけのタリオンを飲んだ。死んでもかまうもんかと思って全部のパウチをあけた。

耳栓をしてニャンギーに薬を与えると器用に吐き出した。ニャンギーの体を掻き寄せてもう一度口に放り込もうとした時、あまりの軽さにニャンギーがゴトンと床にひじをついて倒れた。その軽さと自分が泣いていることと、体中のすさまじい痒さとがもう本当にしんどくて、ああもう本当に死んでしまいたい、ニャンギーが死んだら死んでしまいたいと、絶望的な気分で頭を掻きむしったらぬけた髪が白かった。