さいはてのミツロウバーム

若気の至りでその昔アロマテラピーの資格とっちゃったりしたせいで、めぐりめぐってミツロウとアーモンドオイルを混ぜたクリーム作りを実演する羽目になり、ぶっつけ本番はいくらなんでもだったので基材買って予行演習。最小単位で買ったのに結構な量でこれをどうしようかと思ってたんだけど、使ってみるとよいのである。風呂上りに全身にスリこむと次の日には角質がどんどこ浮いてきた。代謝したってことだ。なんだか肌がふわふわ。言っててきもちわるいけど、ツルツルでもスベスベでもなくふわふわなのだ。ああ、これでアタシも手作りコスメババアだよ。こういうの20代できっぱり辞めたつもりだったのに。天然素材でお肌にやさしいの、口に入れても大丈夫なんだからお肌にも当然いいの、ってはばかりもなく言い放つババアどもにヘキエキしてこういう業界から距離とってたのになあ。じゃあ醤油顔に塗っとけ!アタシはSK2塗るぜ!とか喉元まで出かかるのをぐっとこらえてせめてもの抵抗として合成香料たっぷりの市販のオイルをぞんざいに放り込んで混ぜたりしてる。

昔からアロマテラピー界隈の人のあまりにも化学的視点がなさすぎる感じがたまらなくイヤだったのだ。酸性食品アルカリ性食品とかいうものさしを信じてたりするし、ワセリンは石油でカガクテキブッシツで合成だからダメとかいうし、占星術は勿論信じてるし、血液型なんていわずもがな。どうかするとマイナスイオンとか今でも言うよ。しかも講師が。私もそうとう頭悪いけど、石油が天然物なのはわかるよ。こういう人たちに囲まれて何も言えずにじっとしてるってどんだけ精神衛生上よくないか、わかってくれる人と私は飲みたい。

しかし、日本の書籍もサイトもミツロウをオイルでのばしたものをクリームcreamって言ってるけど、バームbalmだよな。もう何もかも気に入らない。日本語には火を通す調理法を表す語彙が極端に少なくてレシピ本の翻訳がしにくいらしいんだけど、それと関係あるのか、油脂を表す語彙も少い。

あぶら 脂、油、膏、 全部読みはあぶら
ロウ 蝋
ヤニ 脂

くらいじゃないのか。

英語だと
油、脂 fat,oil,grease
ヤニ(脂)tar,pitch,gum
ロウ(蝋)wax
膏 balm
乳脂肪 butter,cream

乳からとれるものまでふくむと結構な数である。あれかなあ、火を通す調理法がたくさんあると出てくるあぶらの形状も色々ってことなのかなあ。出たあぶらをどう精製するかでもまたいろんな状態になってくってことなのかもしれない。

とりあえず、アーモンドオイル10mlにミツロウ20粒で作ったベースにさらに色々ブチ込んだ「自然志向とケンカする気満々バーム」、3日にいっぺんの割合で地味に作り続けてる。
今回はベースをあえてゆるめにし、そこへバラの香りの香膏アルガンバーム(市販品)を加えてなじませることで高価なバラ精油の香りをズルして手軽にブツに入れちゃうぜ、ついでに相性良さそうだから杜松(ジュニパー)いっとけあはは入れ過ぎた、うわー金属くせー、とか、子どもの泥団子あそび草交じりとさして違わない様相を呈している。こっちもクスリで落ちる寸前の頭でやってるし。
できたアルガンバームのバームはビックスベポラップみたいになった。ビーカーの中でえらく「私は薬品よ」って顔をしてる。