箸つれづれ

<使いやすい箸とは>
使いやすいお箸はどれですか?とよく聞かれるのだけれど、極論を言えば実は若い健常者にとって極端に使いにくいお箸はないです。私みたいにテニス肘になったり、歳をとったり腱鞘炎になったり手の神経切ったりして、初めて使いやすいお箸との出会いがある、と言ってもいいと思います。
人間はほんとに器用なもので、少しぐらい短くても長くても、滑ってもけっこう使いこなせてしまう。自分にとってベストな箸探しは、「趣味と好みの領域」じゃないのかなあ・・・。「プチプラでできるこだわり探しの楽しみ」と言えるかもしれない。

一般に使い心地の木箸VS丈夫で長持ちの塗り箸と言われますが、健常者ならどっちでもそんなに変わらないんですよネ。ただ、手を使う仕事の人はちょっとでも負担を減らすために軽くて滑らない箸がいいんじゃないでしょうか。

箸はただの二本の棒なのに、箸を使って人間がする動作は実に多様で、
1)手に持つ
2)つまむ (あるいは裂く、切るなど)
3)口へ運び、口中へ入れる (このあと口唇を閉じる)
4)引きぬく
そのそれぞれのフェーズでそれぞれ違う要素が要求されます。

・手元が持ちやすい(すべらない、角が手に当たって痛かったりしない)
・箸先がつまみやすい(すべりにくい)
・長さがその人にあっている
・箸先の鋭さがその人にあっている (細きゃいいってもんでもないようです)
・口に含んで引きぬく時の摩擦が、許容範囲内である(つるつるだと摩擦がないけど食べ物がすべる)
・清潔でなくてはならない
・安全でなくてはならない
・丈夫でなくてはならない  

食べ物を逃がさない「滑り止め」を施しつつ「唇へのアタリのよさ」も犠牲にしないようにするのが、むずかしいところなんじゃないかなあ・・・となんとなく思います。今思いついたのでこれを箸のジレンマと呼ぼう。
最近プチ催事用のポップをエクセルで作ってテニス肘がぶり返したので、縞黒檀八角木箸無塗装ばっかり使ってますが(他に10膳あって、手がなんともない時はローテしたり、1食で3膳使って食品ごとの滑り具合をみたり)、手が楽だけど、なんかちょっと唾液が吸い取られる感じが最初はしました。慣れたけど。

まとめると、「あなたが手や肘の筋力や神経になんの問題も持っていなければ、見た目で選んで問題ありません。もし問題があるなら、滑り止め加工のあるものを1膳選んで使ってみて、そこをベストな箸探しの出発点にしてはどうでしょう」となるのかも。
ちなみに箸先の滑り止めはおおまかに
・ざらざら仕上げ(漆の粉をまぶす 乾漆仕上げという あまり過度だとなんかちょっとイヤ)
・筋や溝をうがつ (これも箸の強度的にアレです)
・面をとる(先角、面取りという 一番無難? でもコスト増)
・木肌を露出させる(無塗装仕上げ コーティングがないのでその分寿命に影響)
くらいしかない。それぞれ一長一短。

<来週は漆の講演>
漆塗りでとぅるっとぅるの表面は滑るようで実は思ったほど滑りません。とはいえ塗り箸でラーメン食べるのは無理。ちょっとでも滑り止めがあると全然違います。
メイドインジャパンという団体が定期的に日本の伝統工芸をテーマに見学ツアーや講演を行ってるのですが、タイムリーにも来週のテーマは漆@吉祥寺。久々にいせやで飲んでこようかな。しかし4か月前は漆なんてさっぱり興味がなかったのに、なんの因果やら。

紫檀(ローズウッド)>
銘木箸ではよく黒檀とセットで夫婦箸にされます(黒檀が男性用)。
楽器、とくにギターの世界ではハカランダーとも呼ばれる紫檀ですが、箸のみならず建築、芸術、仏壇、香料などなどにも使われる希少材。なんか一説では質のいい紫檀はマーティン社がむこう100年分買い占めてるって話があるんですけど、ほんとなんですかねえ。紫檀を蒸留してアロマテラピー用の精油が得られます。ところで15年くらい前に紫檀で作ったセーラームーンペーパーナイフ、同人誌と一緒に委託に出したら戻ってきませんでした。本は諦めるけど、あれはいまだにざむねん。返して、私のうさぎちゃん。