思い出のカマンベールにセブンイレブンで出会った話

セブンイレブンに「カマンベールの王様」というキャッチコピーで見たことないカマンベールが入ってた。若干高かったんだけど、王様と言われたら買わなきゃな、と思って買ってみたらえらいこと若い。中心部もまだ全然固いし、ミルクの甘味はあるもののうまみは乏しく臭いも控えめで、これだったら東藻琴のやつのほうがはるかにうまいよ、と思ったのだが、どうもこの味がひっかかる。このかすかな甘味には覚えがある。しかし食べた記憶じゃないぞ、なんだこのひっかかりは、と3日ばかり考えて思い出しましたねあたしは。

これははるか昔、猫十字社の「小さなお茶会」で読んだ、霧のミルクから作ったカマンベールだよ!もちろん食べたことないよ!漫画だよ!あと正気だよ!
36,7年前、カマンベールはおろかナチュラルチーズそのものがレンバスなみの架空の食べ物だった頃、霧とともに移動する村で作られる幻のカマンベール(カニャンベール)を、主人公の一人、もっぷが「このカマンベール、出来いいね」ともぐもぐやる場面を見て、いったいどんな味なのだろう、牛乳から作るのだからきっとうっすら甘くてコクがあっておいしいに違いない、チーズというけれどきっとお菓子に近いのだ、だってこの二人(二匹)は大の紅茶党で、紅茶といっしょによくお菓子を食べてるんだから。と思って私が想像した味の第二候補がこの味なんだよ!第一候補はおしどりミルクケーキだったよ!

で、食べた感想はというとそれほどうまいわけでもなく(熟成させたらもちろん違うと思うけど)、私自身もはや猫十字社を読んでおらず、「年を取ったな」「流通の発達ってすごいな」といったところなのだった。

こないだBSマンガ夜話小さなお茶会の回をyoutubeで観て、「都会の人はそういう視線で読んでたのか」とちょっと感慨深かった。私にとっては主人公二人の間のみで完結する世界とかそういうのには興味なくて(むしろ幼いながらにこんな仲の良い夫婦へんだと思った)、紅茶をティーバッグじゃなくて茶葉で入れるとか、パンをスーパーの袋入りじゃない、焼きたてを買うとか、フランス語の詩を暗誦するだとか、そういう日本の農村では絶対に入手できないモノと文化がちりばめられた画面が本当に本当に好きだったのだ。でもそういうものがすでに手の届く場所にあった人たちはそういう目では見てなくて、ポストニューエイジの生き方指南書みたいな感じだったらしい。

時間って。