花より男子35巻

もういいや。おなかいっぱい。ここで離脱。

えーとライバルが出てきてひと悶着あって味方になって敵が出てきてひと悶着あって味方になったりとりあえず決着が先送りになったりその間にどんどんどんどんどんどんどんどん主人公の精神年齢が下がっていく。こんなにこんなだったらもう、地球の安否を主人公が担う日も遠くないんじゃないか。

同時に取り柄のない少女が心意気(だけ)でまわりのいろんなものを一見よい方向に見える方へ変化させてゆく話でもあるのだが、この「影響を及ぼして変化させる(させた)」ということについてあまりにも価値が賦与され過ぎではないか。
また主人公つくしの取り柄のなさについても、見てくれは普通だが勉強はできる子だったはずなのが、またみてくれについてもミスコンを通過したせいである程度の解決を見たはずが、話が進むほどにそのどちらも下方修正されてゆく。出てくる男出てくる男どいつもこいつも主人公に惚れてゆく(そしてそのポイントはやっぱり心意気)のにはもう私は何も言いたくない。

ラブストーリーに起伏が生まれるためにも、主人公の人生経験値が低ければ低いほどあらゆることがドラマになりやすいので都合がよろしい、なのでつくしは話が進むごとに後退せざるをえないのだというしくみということであってるんでしょうか。私にはマーガレットの文法がわかりません。

ということは最初からものすごく経験値のひくい子を設定しておけばいいんだけれども、不思議ちゃんとそれを許容する懐の深い男子(男性)にしてしまうと少女マンガとしては過去に出つくした話になってしまうので、そうではない路線で今のところもっともファインなのが「君に届け」なのかなあ。

10代の恋愛のドキドキ感を盛り上げて長引かせるためだけにものすごい力技で現実が希釈されてゆく。読み進むごとにモヤモヤが募る。6巻くらいで終わってたら「たまにはこういうお勉強もいいかも」とか「花沢と道明寺なら花沢」(でもどっちもいやだ。青池丸が一番いい男だと思うのだが)と思えるかもしれない。

この青池丸の名前が覚えられなくってさあ。和也って何度でてきても「孝平」と覚えてしまうよ。まあでもこの子が一番いい子ですよ。この子がイカ釣りしてるあたりが一番面白いなあ。
こんなゴタク、みんなとっくに言いつくしたことだよねえ。でももう一つ言わせて。雪山で遭難とか無人島で遭難とか刺されて重傷とか記憶喪失とか、BLでしか許されなくなったようなことを全部やってるねえ。そして吊り橋効果であおられてもちょっとやそっとじゃ主人公が鈍感であるがゆえに恋愛に発展していかないところが、ここまでくるとまるで川原泉じゃありませんか。少女を性愛から隔てれば隔てるほど、そこに現れるのは川原泉

しかし絵はきれいですよね。やっぱり松苗あけみ系。おしゃれな画面にちゃんとした若者の私服が趣味よくちりばめられてて、ずっと少女マンガが担ってきた当世のファッション画の役目もおさえてるし、時折ミュシャっぽい決めゴマがはいるのもあざとくなくていい。そういう華やかに盛った画面に、盛りに盛った人間関係をこれでもかとサービスするというその基本的な「在り方」そのものは嫌いではない。

なんだかこのマンガ、時々今BeLOVEで一般人女子がある日いきなりお屋敷のおぼっちゃま(チビっこ)に気に入られてお守り役にならざるを得なくなる話描いてる人の絵と時々すごい似てて・・・同じ話か。

それにしても「守る」という言葉の気持ち悪さについてしみじみ考えてしまいますよ。

くるくる頭がお弁当の味でちょっと記憶をもどしかけるところはアロマテラピー業界人なら誰もが知ってるプルースト効果だな、というところはちょっとおもしろかった。