自炊するということ

18で一人暮らしする前から私は台所に立っていて、食べ物を使って食べ物を作る経験が30年を超えたわけだけど、自分で作って食べることが楽しいと思えるようになったのってわりと最近かもしれない。

いつもどこかに作ることについて脅迫というか「ねばならない」感があって。この仕事について本当に忙しくなって、家事も半分外注して、それでもなおいろんなことがまわらないでいると、自炊が必然的に「自分で自分のために調理をすること」+「自分で自分の栄養の面倒をみること」になってきた。そしてそれでいいと思ってる。

だいぶ前に群ようこさんも言ってたけど、ふだんの料理なんて簡単なもので十分で、自分の能力を超えるものは外で食べたらいいのだ。もし作りたかったら作ればいい。冷凍食品だってほんとに進化したし。

最近は、たんぱく質を間違いなくおいしく食べようと思ったら、薄切り肉をゆでることだなと思ってる。これもなんとなく、塊の赤い肉を調理できてはじめて料理、みたいな気がしてて長らくコンプレックスだったんだけど、もういい。薄切り肉、安いだけでなく、握力や腕力の落ちた中高年の腕にも扱いやすいのだ。ポーションも調整がきいて小分けにできるし、食べたいだけ食べられるし。

で、このゆでるという調理法を私は推していきたいのである。要は簡易なしゃぶしゃぶなんだけど、さっと湯がいてポン酢でもなんでもすきな調味料で食べるのはかなりいい。火が通り過ぎないタイミングを見計らえるし、いちばんやわらかい状態で食べられるし、ゆでる汁に出汁やスープを使ってもいいのだ。ゆでたあとの汁を何かに使うこともできるし、捨てたっていい。とっておこうとすると鍋がふさがってかえってめんどうなこともある。

薄切りの牛肉をきゅうりと炒め合わせるケニア料理(だそうですよ。現地人に教わったから間違いない)にも一時期かなりハマってた。もともと我々は箸食文化なのだし、箸で食べられるようにカット、スライスされた肉がやはり便利なのだ。

あと、蒸してる。タジン鍋を蒸し器がわりにして、その日食べたいものをなんでも蒸す。蒸すという調理法、茹でより焼きよりとにかく早い。卵も最近は蒸している。めっちゃ早いし場所をとらない。ブロッコリーなんて気を付けてないと火が通り過ぎてぐずぐずになるくらいだ。誕生日にはエビを買ってきて、蒸しては食べ蒸しては食べのエビ祭りをやった。4尾も食べたらムネ悪くなって歳を実感したが、満足だ。こないだはかぼちゃを蒸した。シチューに入れる前の下ごしらえだったんだけど、蒸した時点で無茶苦茶甘くておいしかったので、あやうくなくなるところだった。ゆで上げたパスタの具合をみるのにちょっとつまむのに、ちょっとのつもりがけっこうつまんでしまうことってないだろうか。茹でや蒸しのおいしさってそれだと思う。

今日は鉄分不足が疑われたのでレバー食べてアルフェミニ飲んでにらそば(そばと一緒ににらをゆでる)を食べた。父直伝のにらそばだ。みょうがも刻んだ。ネギもきざんですきなだけ入れた。そばはいい。茹でたら食べられる。